市販点鼻薬の使い過ぎによる鼻づまり

以下の内容は当院院長が岐阜放送ラジオで放送されている「ラジオホームドクター」に出演した際にお話しした内容に最近のトピックスや治療法などを追加して記載されております。

皆さんの中にも過去に何度も風邪などで鼻がつまってつらい思いをされた方や、あるいはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などがあり、今現在も鼻つまりに悩んでいる方がみえるのではないかと思います。

そんな時、飲み薬を服用することもあるかと思いますが、中には薬局などで購入された市販の点鼻薬などを使用される方もいらっしゃるかと思います。

市販の点鼻薬の中には、鼻のつまりを改善させるために、血管収縮剤の成分を含有した製品があります。

 

鼻の粘膜は、細い血管が発達していて血流が多い場所ですが、血管収縮剤は、この血管を収縮させる働きがあり、それによって鼻の粘膜の腫れが収まり、鼻の通りをよくするという作用があります。血管収縮剤は素早く作用するため、即効性があり、使用した方は、すぐに鼻の通りの改善を実感することができます。そういう意味では非常に優れた成分なのですが、残念ながら効果の持続時間は数時間しかないため、しばらくするとまた鼻が詰まってきてしまいます。そのためまた、点鼻薬をするという繰り返しになってしまいます。そうして長期間使い続けると徐々に効き目がわるくなり、そのためより多くの回数点鼻薬を使用するという悪循環に陥ってしまいます。そうするとかえって鼻の粘膜が腫れてしまい、余計に鼻つまりがひどくなるという「リバウンド」とよばれる状態になってしまいます。これを薬剤性鼻炎といい、別名点鼻薬性鼻炎ともいいます。

<検査などについて>

鼻つまりなどの症状で受診された場合、まずその原因となるような疾患、例えばアレルギー性鼻炎や、副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、鼻ポリープなどがないかなどを検査します。そして次にそれ以外の原因として、薬剤性鼻炎などがないか等を考えます。薬剤性鼻炎の方の中には、鼻の中の粘膜の状態を観察するだけでおおよそ診断がつく方もみえますが、診断するうえで何より大切なのはやはり、市販点鼻薬の使用歴です。一般的に鼻つまりを主訴として受診される方で、ご自分で市販点鼻薬による薬剤性鼻炎を疑って受診される方はほとんどおられません。

そのため、診察前の問診票や診察時などに使用中のお薬についてお尋ねするのですが、医療機関でもらっている薬や内服薬ではないためか、お聞きしても点鼻薬を使用していることをお答えいただけない方もみえます。しかし、先ほどお話ししたように、市販点鼻薬の使用の有無が非常に重要になってきますので、飲み薬ではないからと自己判断せず、しっかりと使用歴などをお知らせいただくことが大切です。

<治療について>

治療についてですが、勿論薬剤性鼻炎以外の原因もある場合には、そちらの治療も並行して行うことが大切ですが、点鼻薬による薬剤性鼻炎に対しては、なによりまず使用中の点鼻薬をやめること。これが最も重要です。

しかし、実際のところたばこの禁煙と一緒でこれがなかなか難しいのです。なぜなら、元々鼻が詰まるために日に何度も点鼻薬を使用していたのですから、それをやめれば、当然のことながらしばらくの間は、鼻詰まりに苦しむことになります。しかしここが辛抱のしどころです。そして、内服薬や医療用の長期間使用できる点鼻薬に切り替えてきます。

 

医療機関で出される点鼻薬には、ほとんどの場合、血管収縮剤が含まれておりません。そのため、血管収縮剤の含まれる市販点鼻薬に比べ即効性がなく、使い始めは全然効果がないと思われるかもしれませんが、しばらく使い続けることによって徐々に効果が出てきます。そのため、効かないからと言ってすぐに投げ出さず、根気強く続けることが大切です。

最後になりまたが、市販の点鼻薬も一~二週間の短期間どうしてもつらい時に使用するのであれば即効性もあり非常に有用なお薬です。

 実際、医療機関でも短期間処方されることもあります。市販の血管収縮剤の入った点鼻薬にも添付文書があり、その中に必ず、長期間連用しないことといった注意事項が記載されているはずですので、薬剤師さんなどによく相談して必ず用法・用量を守って使用することが大切です。