急性中耳炎

以下の内容は当院院長が岐阜放送ラジオで放送されている「ラジオホームドクター」に出演した際にお話しした内容に最近のトピックスや治療法などを追加して記載されております。

中耳炎という病名はよく耳にしたことがあると思いますが、この中耳炎には大きくわけて、急性中耳炎と慢性中耳炎があります。急性中耳炎は小児に多い病気で、3才までに約7割の小児が少なくとも1回以上は罹患するといわれています。症状としては、耳痛・発熱・耳漏(耳だれ)などで風邪に引き続いて起こったりします。しかし、2才くらいまでの小さいお子さんは、痛いことを訴えることができないため、耳に手を持っていったり、急に夜泣きしたり、機嫌が悪い、原因不明の発熱があるなどの場合、急性中耳炎を疑うことが必要です。

 

【原 因】

耳の穴のつきあたりには鼓膜がありますが、この鼓膜より奥を中耳、鼓膜より外を外耳といいます。中耳は、鼻の奥と「耳管」というトンネルでつながっているのですが、かぜや副鼻腔炎(ちくのう)にかかった時などに、細菌がこの耳管を通って中耳に侵入する事により急性中耳炎がおこる場合が多いと考えられています。特に乳幼児では、この耳管が大人に比べて水平に近く短いために、容易に細菌が中耳に侵入しやすいため、中耳炎を起こしやすいのです。又、鼻の奥には、アデノイドという扁桃組織があり、これが大きい場合もちょうど耳管というトンネルの出口付近に接するため、どうしても細菌が付着しやすく、中耳炎になりやすくなります。

 

【治 療】

 

急性中耳炎の治療は、抗生剤等の内服などの他に、症状の強い時や中耳炎が長引く時などは積極的に鼓膜切開を行い、貯留している膿を排膿してやる事が大切です。鼓膜を切ると聞くと何となく怖い感じがしますし、又特に、急性中耳炎をくりかえす子供さんなどでは、何度も鼓膜切開をしなければいけないこともありますが、鼓膜は皮膚と同じ組織でできているため、ほとんどの場合切開しても数日で切開した穴は塞がってしまうためあまり心配ありません。その他に、原因の所でもお話した様に、鼻の治療を合わせて行うことが非常に大切です。さらに、急性中耳炎は痛みや熱がひいても、必ずしも治ったという訳ではなく、痛みなどを伴わない滲出性中耳炎という状態に移行し長引くことも決して珍しいことではありません。

 

以上の様に、急性中耳炎は放っておいて簡単に治るような病気ではないため、痛くなくなったからといって自己判断で放置したままにしたり途中で治療をやめたりせず、必ず耳鼻咽喉科専門医の診察を受ける様にして、その都度しっかり治しておき慢性中耳炎に移行しないようにする事が大切です。又、中耳炎の予防のためにも風邪をひいたり、鼻水が続いたりする時は、一度耳鼻咽喉科で診察を受けられることをお勧めします。

 

  • 正常鼓膜(左耳)
  • 急性中耳炎(右耳)